「なに、その無様な格好」

開口一番に飛び出たあまりと言えばあまりな台詞に、骸は眦を下げた。

 

僕をこんなに切なく

させるのは

 

久々に姿を見せた男に雲雀はメスのような視線を送って、一気に機嫌を傾けた。

骸は顔の彼方此方にバンソーコを貼って、さらに片腕にギプスを嵌めて首から吊っていた。

情けなさの極まったその様は、雲雀を怒らせるには十分な物だった。別に雲雀とて自分が負けたからといって骸がこの世で誰よりも強いとは思っていない。それでも、心の何処かでそうであって欲しいと願うのは仕方のない事で、それこそ、無敵のアキレウスのようにあって欲しかったのだ。

その骸が怪我を負って目の前に立っている。

心配より何より先に、どうしようもない苛立ちが雲雀を襲うのだ。

一方骸は、そんな不穏な空気を撒き散らす雲雀を、どう扱ったものかと考えあぐねる。

この反応は予測していなかった。

それこそ、冒頭のような台詞は言われるだろうとは覚悟していたが、きっといい気味だと笑われて終わりだと思っていたのだ。なのに、実際の雲雀は骸の怪我を憎々しげに睨み付けている。これで実は肋骨も折れて居るのだと自己申告したなら、どうなるのだろう。

そこまで情けなさを晒すつもりは無いが、少々知的好奇心を擽られる。

いつだって雲雀は予想を裏切って骸を楽しませてくれる。

「僕も敵は多い身ですからね。顔を知られてしまってから、狙われる機会が増えたんですよ」

朗らかに告げて、骸は肩をすくめた。

直接襲ってくる相手だったらいくらでも返り討ちにする自身はあるが、流石に今回のように周りから攻められてはどうしようもなかった。

とったホテルの部屋ごと爆破されたのだ。

注意はしていたのだが、考えが甘かったらしい。「六道 骸」が命を狙われているのは熟知していても、骸本人が実際に襲われたことは無く、どこかに隙があったのだろう。(それはいつだってランチアが受けていたものだ)

今回のことはいい教訓になって、その事件から骸はもっと警戒するようになったし、しばらくの入院生活で何度も襲撃を受け、改めて自身の買った恨みの多さに溜息を吐いたのは秘密の話だ。

実は、骸を庇った千種は未だに入院中だ。近々病院を移すつもりではいるが、転院先を決めるのに難航している。完璧に安全な場所など無いと分っていはいても、出来る限りはそれを求めたい心情はどうしようもない。

自分だけならまだいいが、雲雀を巻き込むのだけは許されないから、会いに来るにもかなりの時間と労力を裂いて慎重に行動してきていた。

彼を傷付けるのなら、それは自分でなくてはならないから。

その雲雀は骸の苦労も知らず、そう、とだけ淡白に頷いた。別に知ってもらいたかったわけでもないから、それでいい。そこで話は終わりだと認識した骸は、久々にあった雲雀に触れたかった。

けれどそう思ったのは骸だけで、雲雀には終わりではない。ただでさえ吊りあがった目をますます吊り上げて、雲雀はソファーから立ち上がって骸に近付いてきた。

「だれがやったの」

「雲雀くん?」

「ねぇ。それ、だれがやったの」

襟首をつかまれて、骸は雲雀に引き寄せられた。すぐ傍に迫った顔は、焦燥と苛立ちに歪んでいた。

「そいつ、殺してやる」

ぎりぎりと奥歯を噛み締める雲雀は、湧き上がる破壊衝動にだれかれ構わずめちゃくちゃに殴りつけてやりたかった。

いや、誰かではなく、目の前の男をこそ殴りたかった。

「君は、僕が殺すのに」

怒りに震える指先で骸につけられた傷を撫で、包帯や軟膏独特の匂いのする胸元に頭を押しつける。

「僕の獲物なのに」

勝手にどことも知れぬ輩に傷付けられた男が、忌々しくてしょうがなかった。

悔しげに言い募る雲雀を見下ろして、骸は、ゆるゆると微笑んだ。

雲雀の執着心が、心地良い。

それは骸が彼に向けるものとまったく同じで、同じだけの想いをかえされる事が、この上も無く嬉しい。

そんなもの、雲雀に会うまで骸は感じたことは無かったから。

衿を掴みあげる雲雀の力が緩んで、何かを堪えるように拳が握られた。それを上から包み込んで、骸は頷く。

「ええ。そうですね」

強く押し付けられる頭に圧迫されて、折れた肋骨が痛む。

だがそんな事より、いきり立つ雲雀に、もうその牙を向ける相手はいないのだと告げた時こそが重大だった。いくら怪我を負って病院に篭っていたとはいえ、骸は報復もしないような間抜けではない。

流石に、この状態で雲雀の相手は骸も遠慮したかったので、雲雀のそのフラストレーションをどこに向けさせるかと、骸はしばらくの間、頭を悩ませ続けた。

雲が雀今の状況から正気に返る、たっぷり1時間ほどの間は―――

 

 

 

どこら辺がお題に沿っているんでしょう…

どこが切ない…雲雀か?雲雀なのか…

ってか、文才の無さに泣きます…どうしてこう同じような言葉の連なりしか出てこない…(涙)

って言うか、最近散文ちっく…文章に流れが無くて途切れてる…

やっぱスランプに陥ってる模様です…