二つの分子を混じえた邸内―― Sunny rainy day. 【貌の無い偶像、それよりも血塗られたその人に縋りたい】 屋敷に戻った2人と、新たな住人2人を出迎えたのは10代目を襲名した青年だった。 エントランスホールにまで出てきていた青年は、最初に扉を開けて入った山本の姿を認めて立ち止まる。 「あ、山本。お帰り」 「おう」 山本は手を上げて、気軽に返す。その後ろに、細身のシルエットが見える。 「おかえりなさい、ヒバリさん」 山本の後から入った雲雀は、階段の上から笑いかけてきた綱吉に軽く頷き返す。そこで、青年が首を傾げた。 「ヒバリさん…その…なんだか子供が見えるんですけど…」 雲雀はまだ、骸とケンと手を繋いだままだ。傍からみれば、異様な光景だろう。自分でも間抜けな格好だとは思うので、雲雀はなにか言ったら殴るよと威圧する。じっさい、車から降りた所で、子供二人と手を繋いだ雲雀を見た山本はなんとも言えない顔をしていたのだ。(爆笑するのを必死になって堪えているような!) 「って、僕の気のせいですよね…疲れてるのかな〜…ははははは」 いくらか慣れたとはいえ、長年染み付いた物はなかなかぬけない。雲雀の眼光に及び腰になってあらぬ方向を見遣った綱吉は、間違いでしたと申告する。 しかし、そうあからさまに見ない振りをされると、逆にむかついて来るものだ。 「君、もう老眼なの?」 いっそ哀れむように雲雀が言えば、綱吉は恐る恐るといった様子で雲雀を直視する。 しげしげと眺め、やっぱり気のせいじゃないよなぁと、疲れたように肩を落とした。 「え〜と…じゃぁ、やっぱり、ヒバリさんが連れてるのって…」 「見たとおり子供だよ。それ以外に見えるんなら、入院した方がいいね」 「ですよね…あははははは……って!拾ってきちゃったんですか!?」 綱吉は乾燥した笑い声を広いホールに響かせていたと思ったら、泡を食ったように突然駆け下りて来て、雲雀の前で急停止した。 なにをそんなに慌てるんだか…そう呆れながら、雲雀も山本も、骸とケンの動きに目を配っていた。 骸が銃を所持しているのを雲雀は確認している。車の中で抱き上げたとき、固い銃身に触れたから。そして、骸達の傍にあった死体の死因は、銃によるものだった。 山本もまた、骸の服のある部分の膨らみから、それを察している。 警戒するのは、当然のことだ。 しかし骸もケンも怪しい挙動は見せず、自分たちを物珍しげに縦から横からと観察する綱吉から逃げるように、雲雀の腕に縋る。 きゅっと小さな両手で雲雀の冷たい指を握り、身体を寄せている。 「うわ〜…」 おもわず、綱吉がなんとも取れない吐息をこぼした。 しかし、それも無理からぬことだろう。 大変、貴重な光景だ。 雲雀は自分にまで向けられ始めた好奇の視線に、おもわず正面のボスを殴り倒したくなったが、ぐっと堪えた。まぁ、珍しいんだろうとは思う。世間一般的に、雲雀より綱吉の方が子供受けする。今までだってそうだった。 子供のランボやらイーピンやらに、随分なつかれていたのを雲雀とて覚えている。 なのに、子供からは敬遠される雲雀が綱吉よりも懐かれているのだ。 誰が見たって、不思議に思うだろう。 けれど、きっと子供のタイプが違うのだ。 裏の世界で生きてきたと言っても、彼等は愛されて育まれてきた。 温もりを知り、包まれてきた子供達。 それが多分、決定的な差だ。 現に、先ほど骸が綱吉を見て呟いた言葉を雲雀は拾っていた。幸にか不幸にか、綱吉たちの耳には届かなかったようだが。 「気持ちが悪い」 そう骸は言って、雲雀と繋ぐ手をぎゅうっと握り締めた。ケンなど、完璧に警戒している。 骸達には、綱吉の向ける愛情が不快で奇異で仕方ないのだろう。 しかし、異質な物を見るかのような子供の視線を、ただの知らない大人に対する萎縮と取った綱吉が、安心させるようにがちがちに強張ったケンの頭を撫でようとした。 途端、ぱっと飛びのいてケンは雲雀の背後に隠れた。雲雀は、自身の背に回ったケンをちらりと見、綱吉に向き直った。 「嫌われちゃったかな?」 雲雀の背から、犬がじいっと綱吉を睨む。 子供の扱いに関してはかなりの自信があった綱吉は、明らかに落胆したようだ。 「まぁまぁ、気にすんな!オレも嫌われたみてぇだし!!」 肩を落とした綱吉の背をバンバンと叩き、山本が明るく笑った。慰めに、叩かれた背は痛いだろうなと雲雀は思う。 「僕が面倒を見るから、君は気にしなくていいよ」 「はぁ…」 そうは言われても、保護欲が強い青年はいまいち諦めきれずに、まだ二人を見ている。 それでも、雲雀は綱吉を骸達と関わらせる気は無かった。もともと雲雀が独断で拾った子供だし、向けられる加護に慣れない二人が、反発を起こして綱吉を傷つけるともわからないから。理解できない物を排除しようと言う傾向は、人間ならば誰でももつ性質だから。 まぁ、骸達がいささか規格外かもしれない子供とはいえ、今の綱吉を傷つける事は無理だろうが。 それでも、万が一と言う事もある。 雲雀は、二人を拾ったとはいえ、あえて守ってやろうとは思わないから、そんな事態に陥ったら、庇う気はさらさら無い。むしろ自己の責任において、率先して二人を始末するだろう。 薄情かもしれないが、それは雲雀の中では覆しようが無い不文律だ。 雲雀が骸たちに約束出来る事があるとしたら、安全な寝床と食事くらい。あとは、望むものを得る事の出来るきっかけと知識。それくらいしか、与えるモノは無い。(それだって、充分すぎるくらいだ) 骸たちは、自分の身は自分で守るだろう。 守護を必要とする子供だったら、雲雀が拾う価値もないのだから。 「その子達、背後の方は…」 ようやく諦めたのか、ケンから顔を上げた綱吉は、不安げな、だが、芯の通った瞳を雲雀に向けてくる。 「心配いらない。僕が全部責任を持つ」 「…なら、僕はなにも言いません」 さっき、山本に言ったときと同じように躊躇せずに言い切った雲雀に、しっかりと頷いて、綱吉は雲雀の無茶を許容した。 「ありがとう」 断わられるとは思っていなかったが、それでも嬉しい事に変わりは無い。雲雀は、やんわりと微笑んだ。 剥き出しにされた警戒。それが、決して彼らが交わる事の出来ない存在の証明だと、理解しきっていなかった。 NEXT 凄く久しぶりな連載…やっぱり間隔あけるとダメですね…掴めない… そして話が進まない事進まない事…マジで10超える? やな感じだ…やっぱり私は連載苦手だ… しかしどうしてこう骸が目立たないんでしょう…ムクヒバなはずなのに…早く引き取ってからの母と子のラブラブな日常生活を書きたい…母子家庭ですから(にっこり) 父親候補はたくさんいますが、皆排除の方向で…ほら、骸さま自身が子供から旦那へと立場を変えなきゃダメだからね…でもディノヒバ入れたいなー…好きです、ディノヒバ…ムクヒバの次くらいに |