陽だまりの中、君と

 

とろりとろりと、夢に微眠む。

自分を包むすべらかな布に顔を埋めて、さながら蛹のように。

窓から差し込む陽光は室内の温度をやわらかく上げ、どこか息苦しいような生温い空間を作り上げる。

設えられた寝台は調度窓の下にと位置付けられていたが、包むその膜が痛いほどの陽射しを遮り、ただただ温かさだけを与える。

それは瞼を閉じた世界も同じで、暗闇ではなく、ぼやけた光に満ちている。

そんな心地良い空間に身を委ねていると、不意に闖入者の気配を感じ取って、恭弥は不快に顔を歪めた。

招かれざる客人は、我が物顔で(否、確かにこの家は骸の家でもあるが、此処は恭弥の部屋だ)その空間に侵入すると、ぐるぐるとブランケットを巻きつけてベットに転がっている物体に目を止めて、飽きれたように吐息をもらした。

「まだ眠ってるんですか、恭弥?もう日も随分高いのですが」

足音をこそとも立てずに近寄って、ベットの空いたスペースに腰を落とした骸が覗き込んでくるのを察知して、恭弥はもぞもぞと身体を動かして背を向けた。むろん、ブランケットに包まれた恭弥の顔の向きなど、骸からはわかりはしないが、なんとなく背を向けたんだろうなぁということぐらいはわかる。

「声をかけてるんですから、返事くらいしてください」

明らかに不機嫌になった弟の声にも、シーツの中身はうんともすんともしない。

「恭弥。いい加減起きてください。せっかくの休日なのに、寝てつぶしてしまうつもりなんですか?」

午前中ずっと放って置かれて、骸もそろそろ我慢が効かなくなって来ている。朝このベットを出るときに見たきり、恭弥と顔をあわせてもいない。

朝食にも下りてこなかった兄に、骸が不貞腐れた顔でブランケットに手をかけて無理やり引き剥ぐと、恭弥の黒いさらさらとした髪が覗いて、駄々をこねるように形のいい頭が振られた。

「おきてください、恭弥。一緒に散歩にでも行きましょう」

しぶしぶと顔を上げた兄は、部屋を照らす光に眩しそうに眉間に皺を寄せて目を眇めて、骸の手からブランケットを奪い返すとまた丸まってしまった。

「恭弥」

「いやだよ」

「…じゃあ、いいですよ」

「なに?」

ごそごそと隣にもぐりこんで、背後からブランケットごと抱き込んで来た骸を、恭弥は不機嫌そうに振り返った。

「起きてくれないなら、一緒に寝ます」

「別に僕に構わず好きな事やったら?」

「だからこうしてるじゃないですか」

真顔で返す弟に、この子将来大丈夫なんだろうかと一瞬不安を覚えて、しかし寄せる睡魔に勝てずに恭弥は小さな欠伸をひとつして、そのままことりと眠りに落ちた。

弟は、これはこれで幸せそうな顔をして兄の肩に顔を埋めて瞳を閉じる。

 

兄弟の、とある休日の出来事。

 

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別に兄弟である必要は微塵もなかったのだけれど、雲雀が素直に身体を預けてくれるなんて、兄弟設定ぐらいしかないかな、と(あ、大人になったサニーでも大丈夫か・・・あれだと骸がセックスに持ち込もうとするからダメか)

っていうか恭弥兄、弟はもう手遅れです