一人きりの部屋

 

 

扉を開いて、目に飛び込んで来たその寒々しい室内に寂寥が募る。

つい昨日まで機能的で余分な物が一切無いその自宅に限りない満足を覚えていたというのに。

黒い家具、白いカーテン、銀色の金具。

どれもこれもこの胸に空いた空虚さを酷くさせるばかりで、喪失に押しつぶされそうになる。

部屋を変えよう。

玄関先で立ち尽くして、雲雀は漠然と決めた。

黒と白ではなく、極彩色で家を染めてしまおう。

青と、赤とで。

ずるずるとドアに背を滑らせながらしゃがみこんで、凍えてしまわないように蹲る。

 

あの男は、もういないのだ。