愛方に唆されて銀リボ。(銀魂とリボーンの混合パラレル)

攘夷派高杉一派の一員である骸と、陰間(男娼)の雲雀。

 

 

通りからは今だ喧騒が聞こえてくる。

客の袖を引く遊女や陰間達の甘く媚びた美声。

それを冷やかし、品定めする客たち。

ぼんやりと耳を傾け、ただ静かに置物ように場に侍っていると、話が終わったらしい。

男の一人が立ち上がって、部屋を出て行ってしまった。

本来なら見送りをしなければならないのだろうが、雲雀の客と言うわけではなかったので、雲雀は黙ってその細身の背が襖の向こうへ消えるのを見ていた。

鮮やかな女物の着物が、よく似合っている男だった。

この花街の男娼と言っても通るだろう、その美貌にも目が惹かれる。

だが、自棄に物騒な男だ。

ゆるゆると、雲雀は隣に座る、残った男に視線を送った。

今晩の雲雀を買いきったばかりではなく、もう三日も居続けている男だ。

昼三太夫にも増す揚げ代を、よく払いきれる物だと感心するより先に呆れる。

今が大事のときと同士が駆けずり回っている時に、遊興にふけるのだから。

人の出入りが激しく、この街は身を隠すのにはもってこいの場所だとは思うが、骸は随分と楽しんでいるようだから、これは完全に彼の趣味だと思う。

骸に言えば、「貴方と一緒にいたいからですよ」と、また胡散臭い笑みでもって言われるだろうから告げたりしないが。

それでも、するべき事はしているらしい。

先ほど訪れていた男との密談からも、それが窺えた。

「いまのが、高杉?」

かつて、男の口から語られた事のある同士の名前を口にしてみる。

名乗られたわけでないけれど、多分間違いは無いだろう。

脇息にもたれ、杯を静かに傾けていた骸は、瞳を眇めてみせた。

笑ったのかもしれない。

「ええ、そうですよ。怖い眼をしてるでしょう」

自分のことを棚に上げたその言い草に、雲雀ははなじろんだ。

骸は飲み干した杯に、澄んだ酒を雲雀に望むことなく自分で新たにそそぐ。雲雀に乞うても、無駄だとしっているからだ。

「君と同じじゃない」

「おや。そういえばそうでしたね」

クフフと笑う男に、雲雀は無言で傍らに置いていた三味線を引き寄せると、そろえて置かれていた撥で弦を弾き始めた。

「詠ってくれるんですか?」

めずらしい、と嘆息した男に、ちらりと弦に落とした視線を送る。

「平家物語でもね。栄耀栄華も、一瞬にしておわるんだよ」

この世ほど儚く、移ろいやすいモノは無い。

「彼らの、栄華がね」

暗に、自分たちを示しただろう雲雀の言葉を彎曲し、その華やかな帯に締められた腰を抱き寄せて、骸はまた密やかに笑った。

 

儚い泡のようにはじけて消えるこの世ならば、思うが侭に生き、好いた相手を抱いて死ねれば本望でしょう。