雲雀くん

 

君は元気にしているでしょうか?

 

僕は元気です

 

僕だけでなく、千種も犬も、皆元気にやっています

 

雲雀くん

 

君のことばかり考えています

 

この灰色の空の下で、君のことばかり思っています

 

例えば君の、小鳥が囀ったかのような、ころころと舌の上で転がるような君の声

 

例えば君の為だけに咲いていたあの桜の花びらのような薄紅色をした君の可愛らしい爪

 

たとえばうすい皮下を流れていた血に濡れた鮮やかな君の唇

 

君のことばかりが思い出されるのです

 

雲雀くん雲雀くん

 

君のことばかり考えています

 

刑の日取りが決まりました

 

三月後の夜明けには、僕はもうこの世にはいないでしょう

 

それでも、おかしいですよね

 

考える事も心配事も思い出す事もたくさんたくさんあるはずなのに、何故か君のことばかりが思い出されます。

 

君のことばかり考えています。

 

雲雀くん雲雀くん

 

たぶんきっと、この命が消えるその瞬間まで、君のことを想っているのでしょう

 

もう会うこともないでしょうが、僕がいたことを忘れないでいてくれると嬉しいです

 

君が好きでした

 

ただただ、君が好きでした。

 

それだけは、信じてください。

 

それではまた

 

監獄の中の囚人より、愛しき牢獄鳥へ

 

閑居にて