頬を撫でる手。

 

やわらかに落とされる瞼へのキス。

 

これは幻で、現実じゃない。

 

男がこんな風に雲雀に触れたことは無かった。

 

だからこれは夢か、でなければ自分が見せる願望のはずだ。

 

けれど、その触れる手は確かにあった。

 

「なんで、ここにいるの」

 

ゆっくりと眠りに閉じた瞳を開ければ、雲雀にはもう手が届かない所へ去ってしまった男がそこにいた。

 

「どうしてそんなことを言うんです?」

 

男は、我侭を聞く恋人のような顔をして雲雀を見ている。

 

「だって、きみは死んだはずでしょう」

 

呆然としたそれに、男は困ったように笑った。

 

笑う男の胸には、ぽっかりと虚ろな穴が開いている。

 

真暗な穴は、吸い込まれそうで恐ろしい。

 

「君に会いたくて、地獄を抜け出してきてしまいました」

 

なんでもないことのように、簡単に言って、そっとそっと、雲雀の頬を包み込んで、顔を寄せる。

その黒にも見える深い青の瞳と、正反対の赤の瞳に、彼だと突きつけられる。

 

「ばかじゃない」

 

思わず呟いて、泣きそうだと自分で自覚しながら、もう一度繰り返した。

 

「本当に、バカじゃないの」

 

「かもしれません」

 

やはり、男は笑って優しいだけのキスをして、そっとそっと、雲雀に触れる。

 

「ねぇ、なんでそんな風に触るの」

 

過去の男には無い触れ方に、雲雀は戸惑って男に縋りついた。

 

「本当は、ずっとこうしたかったんです」

 

できませんでしたけれど。

そう言って、悲しげな顔をして、骸はゆっくりと雲雀と重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜明け前、愛の言葉を囁いた、一晩だけの恋人。

 

 

 

 

 

 

 

 

還り来る恋人 by 2.fantasma

 

これで甘々だと言い張る自分。

…………………………………………………………………………………ごめんなさい!!!

か、書き直します!!

これとはまた別に、書きますから!!

許してください!!