恨みがましげに張り付く視線が愉快だと言うのは悪趣味なことなんだろうなと、自覚はしていても直そうなんて思わない。

普段思い通りにならないものなんてありませんとすました顔をしている嘘つきが、心情をあからさまに剥き出しているのは、酷く喜ばしい。

世界は本当の所、彼の思い通りにならない事ばかりで、そのくせ殊更なんでもないかのように取り澄ました顔で笑んでいる様は疳に障る。

僕の前でまでそんな風にしてみせなくていい。

僕は君に縋るほど依存するほど弱くはなくて、君が寄りかかったって甘えたって一向に気にならない。煩わしかったり鬱陶しかったらその場で拒絶する(足蹴にして殴り殺してあげてるでしょ、いつも)。

だからその仮面に罅が入って壊れて剥がれた、素の表情を見たい。

滑稽で愚かで醜くて馬鹿で、間抜けでどうしようもないろくでなしでいいんだよ。むしろそんな君を見ている方が心が躍る。余裕を無くして、僕の一挙一動一投足にあたふたとしている君なんて最高だ。

草壁に対して悋気も顕わに彼曰く愛の眼差しを送ってくる姿は彼の部下にしてみれば目も当てられないという奴だろうけど。

僕の持ち物に手を出したどうなるかは以前教え込んでやったから、草壁には手も出せないからじっとその嫉心を押さえ込んでいるせいでジレンマに陥って鬱だかノイローゼだかになってさめざめと泣きすがってくるのには閉口するけれど、あれはあれでそれなりに楽しい。そうやっていれば、可愛くないこともないから。

草食動物も群れる輩も嫌いだが、小動物や可愛いものは嫌いじゃないんだ。

「恭さん」

「なに」

「そろそろ構ってあげてもよろしいのでは」

「まだだめ」

だってまだ泣き縋ってきてないからね。

いい加減、どうすれば甘やかしてもらえるか学習すればいいのに、あの男は嫌われるのを怖れるあまり臆病になって見落としている。

僕は強者が好きで、君が哀れに愛を乞うてくる姿は嫌いじゃないんだよ。

世界を拒絶して塀の中に閉じこもっているくせに、僕を求めて其処を飛び出してくる君は、誰よりも強い。

 

 

 

 

(だから早くここまでおいで)

 

勇敢なる脱獄者には愛を

 

 

 

 

大人の雲雀さんは甘えたり縋ったりするのも強さだと認めることが出来るようになっていると思います(しかしこんな優しい雲雀は雲雀じゃない)

自分の心をさらけ出す訳ですから、すごく勇気がいることだと。

ていうか、長年骸にまとわりつかれた所為で甘やかすスキルを身につけたんです、きっと。

骸さんがあんまり痛々しいものだから。(イタイ子という意味も含んでます)