ちょっとグロイかもしれません あと、病んでる? それから死にネタ 雲雀が既に死んでます 骨のような白い月が浮かぶ下で、骸は一心不乱に地面を掘る。 ひとでなしの恋 がりがりがり 固い固い地盤に指を突き立てる。 湿り気を帯びた土が爪の間に入り込んで鋭敏な指先の触覚は違和感をたえまなく訴えていた。だが、骸はそんなもの知覚していなかった。 ただ無心に大地の表皮を抉っていく。 其処に、彼がいるのだ。 がりがりがりがりがりがりがりり、べり 爪が、剥げた。 固い地面に対して、骸の柔らかい爪と薄すぎる皮膚はあまりにも無力だった。爪が剥がれ、桃色の肉を曝け出される。けれどそれは溢れた血の赤に覆い隠されるよりも早く、黒染んた砂粒に塗れた。 剥き出しにされた果肉に頓着せずに、骸はただ只管に土を掻き分ける。爪が剥がれた事にすら、気付いていなかった。 夜闇に暗く沈んだ鮮血の赤は、骸の眼には映っても居ない。ただ、ほんの少し滑りが良くなったと捉える程度だ。 ざりざりざりがりがりざりがりがりり 強靭な地面に、骸は舌打ちした。 先日の今日で、何故これほどまでに凝結してしまっているのか。 ほんの二夜ばかり前の晩。長い永い時をかけて砂が自重によって沈下していたはずの大地を掘り起こし彼の姿態を埋めた時はこれほどまでに強固ではなかった。 まるで奥深くに抱いた彼の身体を骸に渡すまいと邪魔をしているようで、骸に焦燥と恐慌が同時に逆巻く。 「いい加減に…っ」 がっ 一際乱暴に指先を突き立て、いっそう手に力を込めて、地面を引っ掻く。 だがそれすらも微々たる効果しか得られない。掻き出される土の量は泣きたくなるほどに些細な物だった。 「彼は、僕のモノです」 憎々しげに吐き捨てて、骸は傷付き血泥にまみれた手を動かし続ける。 どれくらいそうしていただろう。僅かな時間だったかもしれない。だが、骸には永遠にも感じられた。 彼と離れている時間は、苦痛以外の何者でもなかった。 ふいに、ざらざらとした土以外の感触に指が突き当たった。 骸はそれに背を押されるようにさらに手を早めて土を取り除いていく。 ざっざっざっ それでも、先ほどまでの乱暴な所作とは違い、まるで宝石でも扱うように細心の注意を払って。 ざっ ふいに、月光に白が浮かび上がった。 湿った土の中から現れた、瞼をふせた能面のような白磁の面。青褪めて血の気の失せた顔は人形のように、冷たく、かたい。 そっとそっと、その肌に触れて、骸は安堵したように喜びを浮かべ、微笑んだ。 「雲雀くん――」 骸は首から下を大地に埋め、その貌のみを露出させた最愛の人に、体を屈めて口付ける。 顔を寄せたひんやりとした雲雀の体からは、甘い腐臭がする。追っ手から逃れて此処に隠した時よりも、よりいっそう腐敗が進んでいるのは明白だった。微生物を多量に含んだ山中に埋めればそうなる事は自明の理だったが、それ以外の選択肢はその時の骸には残されていなかった。時を掛けずに、雲雀の身体は腐り落ちるだろう。 だが、そんなのは些細な事だ。 骸は雲雀が原型を留める限りはこのままで置くつもりだが、そのうち灰と骨に変えてしまおうと考えている。その方が逃亡にも有利だ。雲雀の凛とした美しさが損なわれてしまう事は惜しいが、それらは全て骸が覚えていればいいことなのだから。 「離れていて、寂しくなかったですか?ねぇ、雲雀くん」 既に死人となった雲雀の耳元で、一人置き去りにした事を謝罪するように骸は囁く。聞こえているとか、いないとか、気にしてはいない。 上機嫌に含み笑って、しばらく土に汚れた雲雀の頬を撫で、口唇を弄ってから離れた骸は、恋人を暗く冷たい地面から助け出す為に、また腕を動かし始めた。 ・・・・・・・・私相当ヤバイ? や、骸様が埋めた雲雀の死体を掘り起こしてキスしている情景が浮かんで・・・ 首括ってきます・・・ |