4人目の貴方

 

 

「ぐ、ぅ」

呻き声を上げながら洗面台に縋り付いて、雲雀は一度はその胃に収めた食物を吐き戻す。

あとからあとから競り上がって来る胸のムカツキは、一向に収まらない。

これが慢性的に食事の度に続く事を、嘗ての二度の体験で雲雀は知っていた。

ずるずると座り込み、いつまで隠しとおせるだろうと、腹を抱え込んで蹲った。

子供なんて要らないといいながら、骸は雲雀の膣に精を吐き出すの止めない。

なんど悲鳴を上げて懇願しようと、彼は彼のモノだと言う証を躰の内側まで塗り込める。

そんな事を繰り返せば、正常なこの身体はその種を孕んで、育もうとする。

二度目に身篭った子を、その父親の手によって殺された時、雲雀は哀願した。

中に出すのを止めてくれないのなら、せめて子供など産めないようにこの体を変えさせてくれと。

今の医療技術なら、容易いことだと。

殺されるのがわかっている命ならば、最初から身篭りたくなどなかった。

だが、それすらも骸は許してくれない。

笑って、彼は、僕を孕むその肉を、なぜ失う必要があるのですかと雲雀の胎をこの上なく優しく撫でた。

歪んだ男は、己の増殖する細胞を憎み、殺す一方で、己を育むその細胞の塊を愛する。

 

いっそ、狂ってしまいたい。

 

骸の歪んだ愛を宿した胎を押さえて、雲雀は咽び泣いた。