流れて落ちる髪を掻き上げる指。

頬に触れる、節くれだった歪な指。

覚えのあるそれに、異形は閉じていた瞼を開けると、己の顔に触れる相手を睥睨した。

 

「貴様は死んだはずだろう」

 

赤い髪をした死人の胸には、真暗な穴が開いていた。

虚ろな、死の淵の穴。

しかし悪鬼の容赦無い断罪に、死人は平然と笑った。

 

「お前に会いたくてな、ユーバー。地獄から舞い戻ってきてしまった」

 

かつてと変わらぬ風に触れる手は、やはり変わらぬ温もりだった。

それを甘受し、男のするに任せても、胸に渦巻くものを収めるなどどうして出来よう。

 

「バカめ」

 

ならばなぜ死んだと、異形は暴虐に唇を吊り上げて吐き捨てた。

 

 

還り来る恋人