清廉な白が、どこまでも淫らに姿を変える様を知っている。

 

 

その指先に

触れる赤

 

 

ひらりと目の前を過ぎ去る白を目の端で捕え、無意識、に。

腕を伸ばしていた。

 

「アルベルト?」

 

囚われた本人に疑問符付きに名前を呼ばれたが、答えず軍師は無言で捉えた指先を見詰め、己のそれと絡めた。

 

白く、ほっそりとした指だった。

白魚のような手という言葉があるが、見た限りではまさにその通りだろう。

それでも柔らかいということは無く、その硬さがいっそ貴族的な容姿には不釣り合いだった。

絡まり合わせた指と指。

人と比べれば白い部類に入るだろう己の肌も、いっそ作り物の様な異形の白と重なり合わせてしまえば白いとは言えずにその対比は明らかで。

節くれだった男の手と、すっと直線を描くかのような異形の手。

常に剣を振るい、傷つくはずの悪鬼の手より、剣を持つことのない己の手の方がごつごつとして無粋なことが不思議に思われる。

それでも、女のように華奢な訳ではない。

その手はどこまで行っても男の手で、柔らかなふくらみはどこにも無い。

長く、骨ばった細い指。

鋭角的なフォルムはそれそのものが凶器のよう。

 

その指、が。

肉を裂く様を、想像する。

 

桃色のやわやわとした大地に埋もれゆく指先はその指を持つ異形の内部を己が割り開く時にも似て。

陶器のようなその白が醜悪な腐臭を放つ生暖かいぬらりとした赤に犯されるのは途方もなく淫靡な光景だろう。

 

血の油にてらてらと鈍く光る指先。

 

それ、に。

背筋にぞくりと震えが走る

 

「おい」

呼びかけに答えず、いつまでも己の手を奪われた状態に苛立ったのだろう。

悪鬼は男の手を振り払い、己のそれを奪い返した。

「人の手を持ったまま、なにを呆けている」

呆れたような声に、現実に立ち戻った軍師は苦笑すると離れていった手をもう一度捕え、弄ぶ。

「いや、以外と大きいのだな。もっと小さいのかと思った」

細く長いから、そんな錯覚をしていたのだろう。

こうしてみれば意外なほど自分の手と変わらない

「アルベルト?」

結果が出たならばさっさと離せばいいものを、いつまでも触れてくる指先に戸惑ったような声を異形が上げる。

それに此度も無言で返し、この指が己に触れる瞬間を思う。

 

己の赤が、この指を犯していく。

 

それはたまらなく心地よい愉悦を己にくれるだろう。

 

「ユーバー」

 

その手がいつか己を裂く日を夢想して、アルベルトは情欲を込めてその指先に口付けた。

 

 

 

 

 

 

 

変態がいる!

誰か助けて変態がいるよ!

しかも妄想堂の住人だよ

 

ユーバーの手は陶器のような無機質な白で長く細く骨ばってると思います

女のようにぽってりとした細さじゃない細さ

夢見てますか

そうですか